１．　何故、バイクは盗まれるのか？

（最新のリッターバイクだと、新車購入価格だけて１００万円以上するものも少なくない。
そこからマフラーや足回りをカスタムしていけば、乗用車１台購入できるお金を
愛車につぎ込んでいる人も、それ程珍しくはない。

そもそも、何故バイクは盗まれるのでしょうか？　そしてバイクを盗もうとする奴はどんな人間なのでしょうか。　バイクの盗難対策を行う前に、この事をまず良く理解する事が必要だと思います。




○　あなたのバイクを狙っている人間には、大きく分けて２タイプのある


例えば何ヶ月もバイトをして、ようやく手に入れたバイクを、不法に盗もうとする憎むべき相手とは、どんな人間なのでしょうか？　一般的にそのような人間は、大きく分けて２種類のタイプがあると言われています。


一つ目のタイプは、「珍走団」注１）とその予備軍です。　彼らは凡人には理解不能な珍妙な格好のファッションを好み、人の迷惑など一切気にせず、夜な夜な爆音を響かせて珍走行して、自分の欲求を発散し存在をアピールしている集団です。　彼らの中には、もちろん働いて自分のお金でバイクを買って珍走行を行っている者もいるでしょう。　しかし、そうでない者が少なからずいて、手っ取り早く珍走行に参加する為に、手頃なバイクを物色し盗むケースが多々あります。

彼らが手掛ける盗難には明確な特徴があります。　バイクの好みは主にＣＢやＸＪＲ等のネイキッドで、それらでスキのあるバイクを常に探しています。　高度な盗難技術はありませんが、彼らの絶対数はそこそこ多いので、特にバイト先や大学の駐輪場、レンタルＣＤ屋の前等で無防備に置いていると、餌食になる可能性が高いようです。　盗難を受けたバイクが発見される可能性が少しでも期待できるのは、彼らの犯行の場合です。　が、往々にして発見された時には、マフラーが切られたり、着色されたり、キーを破壊されたりと、バイクに大きなダメージを受けているケースが多いようです。　彼らの中には周到に準備・下見して盗難に臨む者も居るようですが、なによりも最低限の防犯対策と、スキを見せない事が大切です。


二つ目のタイプは、いわゆる「プロの窃盗団」です。　彼らの標的はスクーターから重量車、そして高級車まで幅広いものです。　彼らは窃盗を商売としており、組織的で、その手口は極めて巧妙かつ用心深いものです。　プロの犯行による場合には、ロックをして警報機をセットして万全の盗難対策をしていても、盗まれる事もあるようです。　そして１度盗まれてしまったら、まずほとんどバイクを発見する事は期待できないのも彼らの犯行の特徴です。　その意味では彼らに目をつけられると非常に厳しい現実がありますが、彼らは根っからの犯罪者ですので、他の犯罪同様、犯罪に遭いにくい環境・対策を行う事で、少しでも彼らに時間を与えない、という事に重点をおいて対策を行う必要があるかと思います。

バイクを盗もうとする人間は概ね以上２種類に分けられます。　ここではっきり言える事は、「彼らはバイクに関する知識には詳しいし乗る事もできるが、彼らはバイクを愛するライダーでは決して無い」という事です。　どのような経歴であれ、かれらは犯罪者であり、バイク乗りの敵です。　彼らの餌食にならないよう万全の対策をして、もし仮に彼らを発見し、捕まえた時には容赦なく警察に通報し、損害賠償を請求しましょう。


＊注１）　「珍走団」　・・・　世間一般的には　「暴走族」　と呼ばれていますが、「族」と呼ばれる事を逆に格好良く感じる人間が多数居るらしく、今各方面で現状に即した極めて格好の悪い「珍走団」という呼び名を定着させようという試みがあるようです。　（参考　：　珍走団とお呼び！http://chinsou.hp.infoseek.co.jp/　）　　普通にバイクに乗っている人間にとっては、彼らは迷惑なだけでなく、その一部の人間は上記の通り許しがたい存在でもあります。　私もこのＨＰでは彼らの事を「珍走団」と呼ぶ事にしています。

○　道端に台車に載せた金庫を置いておくようなもの


例えば、財産の入った高そうな金庫を公衆の道端に置いておいたら、果たしてその金庫は何日その場所に留まっているでしょうか？　その金庫には必ず財産が入っている事が判っていて、しかもご丁寧に台車の上に載っています。　もし、何日経ってもその金庫がその場所にあるような所であれば、多分このページを見てバイクの盗難対策など一切しなくても良い、素晴らしい所だと思います。しかし、現実には日本にそのような場所は、ほとんど無いでしょう。それは第２章でご紹介した盗難件数が物語っています。　

さて、もうお判りだと思いますが、バイクを屋内でなく外に保管するという事は、金庫を外に置いておく事とある意味同じ事なのです。　バイクは駐輪場であれ、道端であれ、一目でそこにある事が判ります。　あなたにとっては、一生懸命バイトをして、もしくはﾎﾞｰﾅｽをせっせと貯金をして購入した大事なバイクです。　その価値は２０万円かもしれませんし、８０万円かもしれません。　ツアラーの方にとってはプライスレスでしょう。　あなたのバイクはあなたにとって、できる事なら金庫に入れておきたい程の財産だと思います。

一方で、あなたのバイクを盗もうとする輩にとっても、あなたのバイクは非常に魅力的な、価値のある財産に見えています。　珍走団に取っては手っ取り早く珍走行する為の道具になります。　プロの窃盗団にとってはまさに、一度盗んでしまえば様々なルートを通じて売りさばいて利益を得る事ができる獲物です。　しかもその財産はご丁寧にも車輪がついていて、持ち運びが簡単ときています

バイクは新車で買えば２０万円くらいから、中型バイクなら６０万円くらいはする高価なものです。　他に個人の持ち物で外に置いておくようなものがあるでしょうか？　せいぜい車くらいでしょう。
現に一時期車の盗難は急激に増えました。　しかし、バイクに比べれば車の方が一応重量もあり、パッと軽トラックで積んでいくような事はできません。そして車の次に高価な物がバイクなのです。　ところが、どうも自転車の延長線上にあるからなのか、バイクの盗難対策を熱心にやっている人というのは、車のそれと比較して遥かに少ないのが現状です。　それ故、お手軽に珍走団のから狙われたり、プロの窃盗団は住居に侵入して物色するよりは遥かに少ないリスクでバイクを盗もうとするのです。　そうして年間１２万台ものバイクが盗まれていっています。

バイクを保管する事は、そういう事なんだと思って頂き、まず気持ちで備えて頂く事が大事ではないかと思います。