平成１５年８月２日〜３日　　　信州ツーリング


第１章　(きっかけ)

○　話のきっかけ

「そういや、最近遠出のツーリングしてへんなあ・・・。」 「そやな。　おい、思い切って久しぶりにどこか行こうぜ・・・」

Ｔの新築の自宅で「ジパングツーリング」をボーっと読んでいて、こんな会話を交わしたのは平成１５年６月初旬の事。　お互い新婚生活の身、嫁さんを置いての泊まりのツーリングなど考えてもいなかったのだが、ふと交わしたこの会話がきっかけとなり、お互い溜まっていたものを吐き出すようにアッという間に信州旅行の計画はまとまった。



○　ひさしぶりのロングツーリング復活

Ｔは１６年前に私が大阪の中学校に転校してきて、最初にできた遊び友達である。　性格がまったく違う二人がすぐに意気投合したのは、ひとえに自転車という共通の趣味を持っていたからだ。　転校して顔見知りになってすぐに、彼のプランニングで奈良までサイクリングをした。前日の夜、Ｔは綺麗にワープロ打ちされた”奈良サイクリング計画書”なるものを手に自宅に現れた。そして私の自転車の空気を入れ、ブレーキの利き具合を確認して帰っていった。Ｔが帰宅したあとその計画書を見ると、分単位のスケジュールで堺から大和川沿いに走り法隆寺〜法輪寺〜薬師寺〜奈良公園までの行程が事細かく書かれていた・・・。　そして当日、朝は暗いうちに出発し、１日奈良を見て回り、夕暮れ時に堺に到着。長距離のサイクリングをした事が無かった私はへとへとに疲れた。でも、毎日遠くに見る生駒山脈の向こう側に行ってきたんだ！　という充実感はなんともいえない爽快感があった。

それから、１６年。　お互い嫁さんを貰い、仕事につき、自転車はバイクになった。高校卒業して１０年振りに私が大阪に戻ってきて、久々のコンビは復活した。それでも、日帰りで走るのは奈良や和歌山、淡路島まで走るのがせいぜいだ。

”もっと遠くに、もっと自由に、もっと速く”という気持ちを、常に持ち続けて土日を過ごしてきた。　自転車からバイクに乗り換えた大学時代には毎日バイクに跨り、四国の海や山を走り、北海道を３週間かけて一周した。
社会人になって、福岡では広くて青くて綺麗な海にそれを求めてウィンドサーフィンに熱中、７年間海に通った。バイクの晴れ舞台は年に数回参加したＲＹＵＢＥ＆ひまわり組のツーリング。大学時代に比べてバイクは”海の次”という位置付けだったけれど、ＲＹＵＢＥの年に一回の都井岬だけはすべてに優先させた。ソロツーリングが基本だった私にこのツーリングクラブは仲間と走る楽しさを教えてくれた。ＲＹＵＢＥは今元気が無いけれどそのパワーは、今はひまわり組がしっかり引き継いでいるようだ。
大阪に転勤してきた２年前、福岡で夢中になったあの海は大阪には無かった。　結婚して環境も変わり、気がつけば再びバイクは身近な存在になっていた。　Ｔも幸せな結婚生活を送りつつ、私よりもずっと旅に対するこだわりを持つ男だ。私とは微妙に求めるものは違えど、バイクによるロングツーリングに飢えていた。


そうした状況で、６月のこの日の話となったのだ。昔のように気が向けば即実行！　とはいかないが、二人とも久しぶりにワクワクするものを胸に、予定された８月の第１週週末に向けて準備を始めた。

（開田高原。峠を越えるとその先に広大な高原が広がり
遠くには御嶽山を見る事ができる。）